《続き》

M.Tさん
  中学生の頃にESAのユースチームに参加し5年ほど活動を続けてきましたが、長らく実際に支援地を訪問することはできずにいました。今回のツアーは私にとって念願が叶った特別な機会であり、帰国した今でもまだ夢心地のような状態が続いています。
  一つひとつの出来事について感じたことを挙げていくと切りがないので、ここでは私にとって大きな比重を占めていた読み聞かせのプログラムを通しての感想を書かせていただきたいと思います。大学でベンガル語を専攻していることから各小学校での紙芝居の読み聞かせを任せていただきましたが、「子どもたちに絵本の面白さを伝え、ゾウさん文庫の活用を促進する」という重要な仕事が自分に務まるのか、ツアー開始までは不安でいっぱいでした。人前に出ることが苦手なのに多くの子どもたちを目の前にして上がってしまわないか、大学でしばしば発音の悪さを指摘されている私に先生たちのお手本となるような読み方などできないのではないか……。今回のツアーに同伴してくださった渡辺麻恵さんや他のツアーメンバーがしているように子どもたちともっと近しく話をしたいと思いながらも、初めの頃は読み聞かせをしながら子どもたちの様子を見る余裕はほとんどなく、読み終わるごとに穴があったら入りたいような気持ちになっていました。しかしムングラ小学校で紙芝居の読み聞かせをした後、紙芝居のもとになっている絵本を手渡したとき、子どもたちが輝くような笑顔を見せて絵本に飛びついているのを見て、私の心を覆っていた暗い感情が吹き飛びました。拙いベンガル語による読み聞かせでも子どもたちが物語の世界に関心を向けてくれたという事実は私にとって大きな喜びでした。この時を境に「何とか成功させなくてはならない」とどこかプレッシャーのように感じていた読み聞かせに対する姿勢が変わり、子どもたちとの触れ合いを楽しむ余裕が生まれました。子どもたちと目を合わせてやり取りすると、一人ひとりの表情や反応の違いが良く分かりました。元気いっぱいで身を乗り出してくる子、話しかけると恥ずかしがって友人の陰に隠れてしまう子、お喋りしようと話しかけてくる子……。様々な子どもたちの表情を見たくて、気が付けば普段の人見知りはどこかへ消え、かがみ込んでまで子どもたちに話しかけるようになっていました。子どもたちに何かを「与える」つもりで行っていた読み聞かせでしたが、大きな宝物をもらっていたのは私の方だったのかもしれません。
  このツアーを通して、私の中でバングラデシュは広報紙の紙面や写真越しにしか知りえない「支援地」ではなくなりました。今、バングラデシュと聞いて真っ先に頭に浮かぶのは滞在期間中に私を「アプー(お姉ちゃん)」と呼んでくれた子どもたちそれぞれの名前やきらきらと輝く目、繋がれた手の暖かさです。ツアーが終わった今となっては親しい友人や妹・弟のように感じています。だからこそ、彼らが笑顔であり続けるために自分を役立てることができるのであれば力になりたいと強く感じています。今回のツアーで読んだ紙芝居の言葉を借りて言えば「一つの世界に住む友達」として、日本にいながらも彼らのことを心に留めて日々を過ごしていけたらと思っています。unnamed


K.Sさん
 バングラデシュ渡航2回目ということで、良い意味で緊張しすぎずに各支援地を訪問できたのは良かったと思います。2年前インドに行ったときは、何かを残してこなければいけない、そして何かを学んでこなければいけない、そして去年はベンガル語を話さなければ、意思疎通をしなければという勝手なプレッシャーの下で緊張しながらスケジュールをこなしていた部分があったなと今になって改めて思います。今年は、去年より子どもたちと触れ合い、向き合う時間がしっかりとれたことで、子どもたちとの距離を縮めることができ、1人1人の個性を知ることもでき、彼らも心を開いてくれたのを感じる瞬間が多くありました。だからこそまだまだ時間が欲しいと思ったし、もっと一人一人のやりたいこと、考えていることを知りたい、寄り添いたいと思いました。幼い子どもたちにとっては、私たちのとの時間が「楽しい思い出」で終わってしまうかもしれないけれど、それ以上の何かを感じてくれていたら、これほどうれしいことはないなと思います。特にしっかりプログラムを行ったムングラの子たちに「みんな違ってみんないい」のメッセージが伝わっていれば良いなと思っています。

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